
豚肉は、ムスリムが食べることを最も禁忌としている代表的な食べ物として、非イスラム教徒にもよく知られています。しかしながら、日本のレストランで厳密に豚肉を避けることは意外と難しいことも事実です。
例えば豚肉を食材として避けるほか、豚脂(ラード)、豚の身や骨でダシをとったスープ(粉末を含む)など、豚由来成分を調理の際に使用することも避けなくてはなりません。さらに、豚肉を調理した包丁、まな板、フライパン、鍋などの調理器具や豚肉料理に使用した食器を使って料理を提供することも好ましくありません。求められるレベルには個人差もありますが、十分なコミュニケーションをとると同時に、知識として持っておきましょう。
ゼラチン、ソーセージ、
豚由来の酵素も要注意
豚由来成分は私たちが思ったよりも幅広く、様々な食材に含まれています。例えば、豚脂を原料とする乳化剤や調味料、豚皮を原料とするゼラチンやコラーゲン、ソーセージ用の豚腸、食品の化学合成に使用される豚の内臓に由来する酵素も対象に含まれます。

イスラム教の教義上、アルコールは酩酊作用があるため摂取が禁じられています。個人差ももちろん考えられますが、ムスリムにアルコールを積極的に提供することは控えた方がよいでしょう。調理過程においても、酒類もしくはアルコール成分が含まれる調味料が使用されていることを気にするムスリムもいるため、事前に確認しましょう。

ムスリムは、血(血液)も避けるべきとされているため、肉や魚など動物性食材の血抜き処理に気をつけましょう。また、切ったときの断面や肉汁が血を連想させるため、調理時の焼き加減にも気を配る必要があります。その場合、焼き加減をあらかじめ尋ねる心配りをしましょう。
血液そのものを口にする機会は日本でも一般的ではないと思いますが、スッポン料理などで提供されるような生き血を酒で割ったものは禁忌となります。

魚介類は一般的にはハラルとされていますが、一部のイスラム法学派ではエビや貝を禁忌としています。また、宗教的というより文化的にエビや貝を食べる習慣がなく抵抗感を持つ方もいるので、提供する場合はお客様に確認した方が確実です。その他、蛙、ワニ、亀などといった両生類や爬虫類も禁忌とされています。
行き過ぎたサービスに要注意
聞かれる前に礼拝の時刻を教えるなど、良かれと思ったサービスによって、逆に相手を不快な思いにさせてしまうことがあります。知識として知っておき、ムスリム観光客に尋ねられたときに柔軟に対応できるよう心構えをしましょう。