ハラル食品を扱うには?日本初といわれるハラル食品を製造した事例

ムスリムの多い国々では、ハラル認証製品は当たり前ですが、日本ではハラル認証取得の難しさと
国産ハラル製品のムスリム消費者からの信頼を得るため様々な努力がありました。

自社キッチンでのパンの製造
自社キッチンでのパンの製造

豚肉、豚由来成分はタブーです


 10年ほど前から、インドネシアの食品輸入を始めました。仕事のなかで、インドネシアの方(現在は会社顧問)に、日本ではハラルのパンがないので作ってみてはどうかという提案を受けたのが、そもそものハラル食品の加工製造を始めたきっかけです。
 ジャカルタでMUI(イスラム指導者会議)が主催した世界ハラル評議会(WHC)のセミナーに参加をした経験から、ハラル専門の企業になろうと決めました。輸入商品も、また国内で調達するものも、ハラル以外の食品は取り扱わないこととしました。ハラルのパンは、日本のハラル認証団体に相談をしながら、2年程を費やしてハラル認証を取得しました。当時、海外輸出用原材料のハラル認証の例はありましたが、日本の材料を使用し、日本で加工製造をした物で認証を受けたのは当社が初めてと言われています。


豚肉、豚由来成分はタブーです


 事業を始めた頃は困ったこともありました。私自身はムスリムではありませんが、イスラム教のことを深く知るため、よくモスクを訪ねました。しかし自分が参加していいものか迷いましたし、「おまえは誰だ」と尋ねられて戸惑うこともありました。
 10年前にパンを作った時は、「これは本当にハラルなのか」という問い合わせを多く受けました。国内外のイスラム団体、モスク、留学生サークルから、原材料などのかなり細かいところまで尋ねられました。私たちは誠意を持って、個々の問い合わせに丁寧に答え、少しずつ信頼関係が築かれ認めてもらうようになりました。また「あなたはムスリムなのか」という問い合わせには、顧問と製造担当の社員がムスリムであるということで納得してもらいました。


豚肉、豚由来成分はタブーです


 ハラル認証は、各国にそれぞれの正式な認証機関があります。マレーシアはイスラム開発局(JAKIM)、インドネシアはイスラム指導者会議(MUI)、日本は日本でハラル認証をしている団体がありますが、日本でのハラル認証を取得した原材料や製品はまだ少なく、材料の調達に苦労しました。現在は調味料など約150種類をインドネシア、マレーシアのハラル製品を輸入卸しており、その一部をパンにも使用しています。また近年お弁当のハラル認証を取得し、お肉はオーストラリアやブラジルのハラル肉を証明書付きで輸入しています。
 ハラルのパンを製造するにあたっては様々なプロセスがありました。まず、認証団体からハラル認証申請の流れや必要書類に関して教えて頂きました。ハラル製品の製造は、材料は全てハラルでなければいけません。ただ現実としてどうしても日本でしか調達できない原材料につきましては、製造工程、原材料、添加物、加工助剤などに豚由来物質やアルコール由来物質が含まれていない証明書を材料メーカー及び材料の材料メーカーより取得し精査します。中古の機材もイスラム法に則った特別な方法で清めるなどをして、認証にはかなりの時間を要しました。毎年認証の更新をしていますが、200ページ以上の資料作成が必要です。
 日本では、世界のムスリム人口が巨大なマーケットであることから、ハラルに関してビジネスチャンスとしてとらえる傾向があります。イスラム教を理解せず、ビジネスという視点だけから携わると、実際には色々な苦労があり、それを怠った結果トラブルにつながることもあります。ハラル市場に目を向けるならば、豚やアルコール以外にも彼らが大事にする信仰や生活習慣などを理解しないといけません。また、自身の判断で安易にハラルを名乗るのは避けるべきです。認証機関からの証明書なしには、少なくともハラルとは言えません。
 日本へムスリム観光客を呼び込んでいくことは、日本経済の活性化にもつながると思います。現実問題として日本のレストランやホテルなどが完全なハラル対応する事は難しいと思いますが、当社も出せる知恵や力を持ち寄って、日本へのムスリム観光客の誘致に協力していきたいと考えています。



代表取締役社長二宮氏代表取締役社長二宮氏

 

当該情報は、個々のビジネスプロモーションや宗教的な奨励を目的としたものではございません。また、ムスリムの生活スタイルにも個人差があるため、当該情報はあくまで基本的な情報として 内容をご理解の上、実践対応の際にはくれぐれも十分なご配慮と各自の責任をもってご対応下さいますよう何卒宜しくお願い申し上げます。
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