旅行会社とNPO団体との共同協力でハラルツーリズム

ムスリムの多い国々では、ハラル認証製品は当たり前ですが、日本ではハラル認証取得の難しさと
国産ハラル製品のムスリム消費者からの信頼を得るため様々な努力がありました。

神社仏閣の見学はご案内前に要確認
神社仏閣の見学はご案内前に要確認

豚肉、豚由来成分はタブーです


 私たちのNPO法人が本格的に活動を始めてから2年ほどが経ちます。マレーシアでイスラム教に改宗した協会の理事長が帰国すると、日本はムスリムにとって非常に住みにくい環境であると感じたようです。また旅行会社を経営していた私は、もっとムスリム観光客に日本へ来て欲しいという思いがありました。理事長は「日本に住んでいるムスリムの為に」、私は「これから日本を訪れるムスリムの為に」という気持ちで協会をスタートしました。
 NPOという組織形態をとることには理由があります。厳格なムスリムの場合、食べ物やお祈りの場所が確保できるか不安で訪日旅行には消極的です。その不安を払しょくするためには、駅や空港でお祈りの場所を設けるなどの整備のために国や行政へ働きかける必要がありますが、私たちのような小さな旅行会社では、その意見がなかなか届きません。国に意見を伝えるため、NPOという中立的で公共性の高い立場の組織を設立しました。


豚肉、豚由来成分はタブーです


 今まで300人くらいのムスリム観光客をお迎えしました。時には小さな失敗もありましたが、ほとんどのお客様には満足して頂いています。
失敗した事例をいくつか挙げてみます。例えば、夜桜見物に連れて行ったところ、周りに飲酒をする人が多いことでお客様に不快な思いをさせてしまったことがありました。また買い物途中にお祈りの時間になってしまい、礼拝所もそれに代わるスペースも確保できず、お客様は公共スペースでのお祈りをせざるを得ませんでした。通り過ぎていく人々から注目されてしまい、とても可哀そうなことをしてしまったと思います。
 お祈りのスペースは、レストランやお店で会議室を借りることができればよいのですが、日本人は宗教に対しての関心が比較的薄いためか、なかなか理解が得られません。私たちの要望に対して、ひとつの宗教に配慮をすることは難しいとの回答もありますが、三大宗教でもあるイスラム教に配慮をすることは、ある意味必要なことだと考えます。


豚肉、豚由来成分はタブーです


 ハラルツーリズムは、まだ始まったばかりです。私たちの場合は、かなり厳しい基準でレストランに要求して、できる限り完璧に近いかたちでハラルフードを提供してもらっています。自分たちで厨房や材料、調味料に至るまでを確認して、確実に安心と思えるところのみお客様をお連れしています。
 当社と同水準で他の旅行会社がハラルツーリズムを手掛けるのは、かなり困難だと思います。当社の場合、私自身がムスリムであり、またスタッフにもムスリムがいますので、同胞を迎え入れるという責任感をもって、極めて慎重かつ誠実に仕事をしています。収益のみを目的とした企業が参入してきた場合、結果的にムスリム観光客を裏切るようなことも起こる可能性もあります。今はハラルツーリズムの立ち上がりの重要な時期であるため、参入業者には誠意をもって取り組んで頂きたいという気持ちです。ムスリムツアーを実施する場合は、従業員にムスリムを雇用して欲しいと思います。多くのムスリム観光客は見知らぬ土地でレストランを選ぶとき、ムスリム従業員がいるところを探します。つまり、ハラルマークよりもムスリムが働いているほうが安心できるわけです。そういう意味では、積極的なムスリムの雇用が、ムスリム観光客に安心な旅を提供するための近道とも言えるかもしれません。



代表取締役社長 松井氏代表取締役社長 松井氏

代和食を楽しむムスリム観光客
和食を楽しむムスリム観光客




ムスリム観光客のための使い捨て食器


ムスリム観光客のための使い捨て食器

 

当該情報は、個々のビジネスプロモーションや宗教的な奨励を目的としたものではございません。また、ムスリムの生活スタイルにも個人差があるため、当該情報はあくまで基本的な情報として 内容をご理解の上、実践対応の際にはくれぐれも十分なご配慮と各自の責任をもってご対応下さいますよう何卒宜しくお願い申し上げます。
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