アンコール遺跡群
- 旅のヒント
- アンコール・ワット
- COLUMN アンコール・ワットの鑑賞ポイント
- アンコール・トム
- COLUMN アンコール遺跡群の巡り方
- プリヤ・カン
- ニャック・ポアン寺院
- 東メボン祠堂
- プレ・ループ
- スラ・スラン
- バンテアイ・クディ寺院
- プラサット・クラヴァン
- タ・プロム
- タ・ケウ寺院
- トマノンとチャウサイテヴォダ
- バンテアイ・サムレ寺院
- バンテアイ・スレイ寺院
- COLUMN その他の周辺の遺跡へ

旅のヒント

数多くのホテルがあって、滞在の拠点となるのがシェムリアップ。その市街から7キロメートルほど北方にアンコール遺跡群があります。東京23区に相当する面積の中に数々の遺跡が点在。各遺跡間を個人で移動する場合はタクシーやトゥクトゥクをチャーターすることになります。もっと手軽に遺跡を巡るなら、シェムリアップ発着の観光ツアーに参加するといいでしょう。なお、遺跡群エリアに入場するには、ゲートで各遺跡共通の入場券(1日券US$20、3日券US$40)が必要です。
アンコール・ワット

クメール王朝のスールヤヴァルマン2世が12世紀前半、30年もの年月をかけて建造した一大石造遺跡。外周およそ5キロメートルの外堀に守られた広大な敷地の中には、高さ65メートルの本殿中央祠堂を中心に、ヒンドゥー教の宇宙観を具現化したという幾何学的な大伽藍が展開されています。遠くから見る壮大でいて優雅さをたたえた姿、近くで眺める精巧なレリーフや装飾……。アンコール王朝文明の結晶にして人類が誇るべき憧れの世界遺産です。
COLUMN アンコール・ワットの鑑賞ポイント

正面となるのが本殿に向かって延びる西参道で、左右対称に広がる壮麗な本殿が見られるのもここからとなります。その先には、約200ヘクタールもの広大な敷地に数々の見どころが点在。本殿や回廊といった建造物のみならず、壁などに刻まれた「天国と地獄」や「乳海攪拌」などの精巧な彫刻も必見です。なお、西参道から見る本殿の姿は、背後から朝日が昇り、建物がシルエットとなって浮かび上がる日の出の時間がもっとも美しいといわれています。この風景を見るシェムリアップ発着のツアーも数多く催行されています。
アンコール・トム

アンコール・ワットと並び、遺跡の代表格として人気なのがこちら。10万人の人々が暮らした12〜15世紀の王都です。木造の王宮や館は朽ち果てていますが、環濠や石造りの建造物が各所に点在。なかでもハイライトとなる仏教寺院バイヨンは、迫力ある四面仏顔像が林立し、摩訶不思議な空間が広がっています。中央祠堂を二重に囲む回廊に刻まれたレリーフも見どころです。
COLUMN アンコール遺跡群の巡り方

広大なアンコール遺跡群を初めて訪れる場合、限られた時間の中でどの遺跡をどのような順序で巡るか悩むところです。そんな時におすすめなのは、早朝にシェムリアップを出発してアンコール・ワットの日の出を眺めた後、午前中はしばし休息。昼頃からアンコール・トム、アンコール・ワットと巡るルート。建物や彫刻など、日の当たる角度がもっとも美しい時間となるためです。その他の遺跡をさらに巡る場合は、もう1日を割く必要があります。入場料を支払うゲート横の観光案内所で受け付けているガイドツアーに参加すれば、効率よく巡ることができるでしょう。
プリヤ・カン

アンコール・トムの北側に位置する、12世紀後半に建立されたバイヨン様式の仏教寺院。ジャヤヴァルマン7世が、チャンパ軍との戦いに勝った父の菩提寺として建立したといわれています。中央祠堂の東西に延びる参道にあるリンガをかたどった砂岩彫刻、中央祠堂の北側にあるこの地に珍しい2階建て構造の建物などが見どころです。
ニャック・ポアン寺院

プリア・カン東側にある、大池(ジャヤタターカ)の中に建つ寺院です。寺院の名前は「からみ合うナーガ(ヘビ)」という意味。大池の中央に祠堂があり、円形状の基壇が、治水信仰のシンボルであった2匹の大蛇に取り巻かれたようなユニークな造りが特徴です。大池の四方には小池が配されていて、それぞれ人や動物の頭部をかたどった樋口から水が流れ込んでいます。かつての人々の治水への信仰を表した寺院といわれています。
東メボン祠堂

アンコール遺跡群の東端にある、東西7キロメートル、南北2キロメートルの大貯水池。その池の中に浮かぶように建つのが、この東メボン祠堂です。10世紀中頃、戦に勝利したラージェンドラヴァルマン王はヤショダラプラ(アンコール)に遷都しましたが、その後に建立したと伝えられています。四方に立つ等身大のゾウの彫刻のほか、3層となった基壇の最上部にあるピラミッド型の祠堂が見どころです。
プレ・ループ寺院

東メボン祠堂の南側にある、ピラミッド式の大規模な祠堂が目を引く寺院遺跡。961年にラージェンドラヴァルマン2世によって創建されました。中央伽藍と東塔門の間には死者を火葬したという石槽があり、火葬の儀式が行われた寺院といわれています。レンガと赤色のラテライトの建造物は、朝日や夕日に照らされたときにもっとも美しい姿を見せてくれます。
スラ・スラン

アンコール・ワットの3キロメートルほど北東に、王が沐浴をしたと伝わる聖なる池があります。東西700メートル、南北300メートルほどの大規模な人工池は、ジャヤヴァルマン7世の時代、池の周囲に砂岩の縁取りが施され、西側にナーガの欄干のあるテラスが設けられました。階段は水中へと続いていて、池底は石が敷き詰められています。現在、一部は稲田になっています。
バンテアイ・クディ寺院

アンコール・トムの中心寺院であるバイヨン同様に塔門に四方仏顔像が刻まれた寺で、「僧坊の砦」という意味を持つ仏教寺院です。12世紀末にジャヤヴァルマン7世がアンコール・ワット東方にあったヒンドゥー教寺院を改装し建立しました。四重の周壁に囲まれた境内には、東塔門、東テラス、楼門、参道テラス、中央祠堂などが東西に一列に並んでいます。
プラサット・クラヴァン寺院
921年にハルシャヴァルマン1世によって建立されたレンガ造りのヒンドゥー教寺院で、比較的傷みが少ないことで知られています。ヒンドゥー教の三主神のひとつであるヴィシュヌ神を主神とした祠堂内部には、神妃ラクシュミーのレリーフがあり、その優しい微笑みは特に印象に残るでしょう。アンコール・ワットからスラ・スランに向かう途中にあります。
タ・プロム

主要な遺跡が修復されていくなか、熱帯の木々に埋もれていた当時の姿をとどめるのがここ。12世紀建立の仏教寺院ですが、建物を覆いつくさんばかりに大木が各所で根を張り、まさに密林の中に隠れた遺跡といったイメージ。自然の力強さを見せ付けています。とはいえ、精巧なレリーフや四面仏顔像など、ところどころに破壊を免れた見事な建築を見ることができます。
タ・ケウ寺院

ジャヤヴァルマン5世により11世紀頃に建造が始められたものの、王の死によって未完のままで放置。内部の構造など建設途中の姿が見られるヒンドゥー教寺院です。壁を飾るレリーフや精巧な彫刻はありませんが、主祠堂の四方に副祠堂を配した5塔構造など、アンコール様式を解明する手がかりを今に伝える貴重な存在となっています。
トマノンとチャウサイテヴォダ

アンコール・トムの勝利の門から500メートル。11世紀末から12世紀にかけて、スリーヤヴァルマン2世によって創建されたヒンドゥー教寺院がトマノンです。チャウサイテヴォダは小寺院で、道路を挟んで南側にあります。前者は祠堂の壁に刻まれた「ラーマーヤナ」を題材にしたレリーフ、後者は豊かな表情をたたえ優雅なデヴァター(女神)の像が見ものとなっています。
バンテアイ・サムレ寺院

中央祠堂を中心に回廊で結ばれた東門、西門があり、まるで砦のように環濠と高塀で堅牢に囲まれています。アンコール・ワットにも似た形式を持つ、気品を感じさせるヒンドゥー教寺院です。12世紀中頃、スールヤヴァルマン2世によって建立されたものが、見事に修復を終えています。
バンテアイ・スレイ寺院

かつてフランス人作家アンドレ・マルローがその美しさに魅了され、国外に持ち出そうとして逮捕されたという、祠堂の壁面に刻まれたデヴァター(女神)像がこの寺院のハイライト。「東洋のモナリザ」と呼ばれています。アンコール・トムから北へ約40キロメートル、シェムリアップ川のほとりに建つヒンドゥー教寺院です。そのほかにも、壁面に見事なレリーフを見ることができます。
COLUMN その他の周辺の遺跡へ

アンコール遺跡群やシェムリアップ周辺にある遺跡は、ここで紹介しただけではありません。シェムリアップ川の上流部には、川床一面にリンガが彫り込まれたクバル・スピアン、シェムリアップから南東へ約13キロメートルの場所には、アンコールに遷都する前の王都ロリュオス遺跡など、まだまだたくさんの遺跡が点在しています。こうした遺跡を訪れるには、おもにタクシーをチャーターする方法、シェムリアップ発着の日帰りツアーに参加する方法とがあります。ただし、歩道以外には地雷が埋まった危険な場所もあるので、いずれの場合でも遺跡探訪の際は歩行可能な場所以外に立ち入らないように注意しましょう。